上下両方とも前方に出ていれば、受け口と出っ歯になることがあります
受け口と出っ歯は別物だというイメージが強いかもしれませんが、上下両方とも歯列が前方に出ていると、受け口であり出っ歯であるともいえます。
この状態のことを専門用語で、「上下顎前突」といいます。
口元全体が前に突き出しているように見えます。
歯並びが凸凹ではなくても、上下顎前突である場合があります。
口が閉じにくい、口を閉じたときに口が前に突出しているなどの症状があれば、歯科医院に相談してみましょう。
目次
上下顎前突の原因はいくつか考えられます
受け口や出っ歯と違い、上下顎前突は自分では気づきにくい歯並びと言えます。
上下顎前突は受け口や出っ歯のように、一見歯並びが悪くなさそうに見える場合もあるためです。
特に歯並びが悪いというわけでないのに、口元がこんもりと前方に出ている、口を閉じにくいなどの症状があれば上下顎前突の可能性があります。
では、上下顎前突の原因とはいったいなんなのでしょうか。
通常歯並びは口唇や頬粘膜と舌の力のバランスで決まっていきますが、上下顎前突は口唇や頬粘膜と舌の力がアンバランスになり、前に歯を押す力が強くかかる場合に起こります。
口周辺の「口輪筋」と呼ばれる筋肉の力が弱いと、口唇から歯にかかる力が弱くなり、歯は前方に倒れてしまいます。
そのほか顎の骨の前後径(奥行)が大きいなど、遺伝など骨格的な原因の場合や、口呼吸を日常的にしていて普段から口を開けていることが多い人などに見られます。
上下顎前突は矯正することで治すことができます
上下顎前突を改善する施術法についてご紹介していきます。
セットバック(上顎および下顎の分節骨切り術)
上下の顎の骨を前歯ごと後方に移動させて、歯列を引っ込める施術です。
このセットバックでは上下の前歯から4番目の歯(第一小臼歯)を抜歯し、その歯の根っこにある先の骨まで削り取ります。
顎の前方から骨を削り取った部分まで水平に骨切りし、前歯6本が付いた状態のまま、抜歯して空いたスペース分後方へ移動させていきます。
前歯の傾きや見た目などを調節し、移動させた骨をチタン製のプレートやワイヤーなどを使って固定します。
外科的な施術になりますが、入院も不要で3時間ほどで終わります。
施術中は全身麻酔を施しますから、痛みの心配も少なく済むでしょう。
術後に抜歯した歯の前後のスペースを埋めるため、セラミックの差し歯に変える施術なども必要になってきますが、1日で口のこんもり感を改善することができるでしょう。
歯列矯正
ブラケットやワイヤーなどを使って歯を移動させることで歯並びを改善するワイヤー矯正や裏側矯正などでも上下顎前突を改善することができます。
歯列矯正は歯を少しずつ移動させるため、数年という期間がかかります。
上下顎前突は放置するとドライマウスや虫歯などのリスクを高めます
上下顎前突は口元に違和感のあるものの、特に歯並びが凸凹しているわけではないということもあります。
このような場合は放置しても大丈夫なのでしょうか。
結論から言うと、上下顎前突のデメリットは大きいため早めに改善することをおすすめします。
上下顎前突のデメリットについてご紹介します。
普段食事や会話をしていないとき、お口は閉じているものなのですが、上下顎前突の場合お口をしっかりと閉じることができないという場合が多いです。
お口がしっかりと閉じていなければ乾燥しやすくなってしまい、口腔内の唾液が渇きドライマウスを引き起こしやすくなります。
お口の中が乾燥するとしゃべりにくい、食事がしにくいなどの症状が現れたり、お口の中がネバネバしたりと不快な症状も現れることもあります。
また、お口の乾燥は口臭にもつながります。
唾液には虫歯菌などから歯を守る働きもありますが、お口の中が渇き唾液が減少すると、口腔内の乾燥だけでなく虫歯などに対する抗菌力も低下してしまうのです。
そのため、歯磨きを行っていても虫歯や歯周病にかかるリスクが高まってしまいます。
- 関連記事:歯医者でおこなう歯の掃除の内容や効果・費用とは|クリーニングはなぜ必要?
- 定期的に歯のクリーニングをおこなうことで歯周病を予防できます。
(まとめ)受け口と出っ歯両方になることはあるの?
上下とも歯列が前に飛び出している状態ことを「上下顎前突」と言います。
上下顎前突は受け口でもあり出っ歯でもある状態で、歯列を引っ込める矯正や口唇の力を強化するトレーニングなどを行う必要があります。
歯並びが悪くないように見えても、上下顎前突の場合もあります。
上下顎前突は口輪筋や舌の力がアンバランスな場合や遺伝などにより起こります。
自覚しにくい歯並びであるため、口元が気になるという方は歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
上下顎前突はセットバックと呼ばれる外科的な施術やワイヤー矯正などで改善することができます。
ワイヤー矯正に比べると、セットバックであれば短い期間で美しい口元に改善することができるでしょう。
上下顎前突はお口をしっかりと閉じることができない場合が多く、口腔内が乾燥しやすいため、ドライマウスや虫歯・歯周病にかかりやすくなります。
上下顎前突は見た目だけでなく、お口の健康にも悪影響を与えるためできるだけ早めに改善しましょう。