猫背は歯並びを変化させます
猫背になると、頭の位置の変化によって下顎の骨(下顎骨)の位置も変化します。
また、猫背が長期間続くと呼吸様式も腹式呼吸から胸式呼吸へと変化することで、鼻呼吸から口呼吸へと変化、口が開きっぱなしの状態になります。
下顎骨の位置の変化は嚙み合わせを変化させるために、弱い力が長時間歯の一部分にかかり続けることで歯が動き、歯並びを変化させます。
また口が開きっぱなしになると、前歯の生える向きを支える要素が弱くなることで出っ歯になったり、逆に前歯が内向きに生えるなどの変化が起こります。
猫背では体の重心がやや前方にシフトした状態です
まず、猫背とはどんな姿勢なのか、ご紹介しましょう。
人の胴体(体幹)を支える背骨(脊柱)は頭側から、頸7椎、胸12椎、腰5椎で構成され、癒合した仙椎とそれに付随する骨盤の上に乗っています。
脊柱にはS字カーブがあり、頸と腰は前に凸、胸は後ろに凸に弯曲しています。
このカーブによってそれより上の重みを支え、緩衝できるようになっています。
また、胸椎には肋骨が左右に12椎ついていて、胸の前にある胸骨を伴って胸郭を形成し、その後ろには鳥の羽のように肩甲骨が乗っています。
一般的な猫背とは、胸椎の頭側、頚椎に向かって前側にカーブしている部分の弯曲が強くなり、横から見ると本来くるぶしの真上あたりにあるように見える肩や耳たぶ(耳垂)が、前の方に出っ張ったような状態になります。
このような状態になると頭の重みで頭は前方にやや落ちたような恰好となりますが、そのままでは顔は下を向てしまうので、頸を反らし頭を無理に持ち上げるような状態になります。
このような猫背の姿勢では腹筋が緩み、胸椎全体の丸みのために胸郭は広がるために横隔膜が働きづらくなることで腹式呼吸がしにくくなります。
このような姿勢が長時間続くとたくさん息を吸うために、呼吸の際に胸の上側が広がるようになる胸式呼吸になってしまいます。
猫背は歯の噛み合わせを変化させます
猫背を長い時間続けていると、体には様々な変化が起こります。
口は頭蓋についている上顎と、耳の前側にある顎関節でぶら下がった状態にある下顎骨とで構成されますが、猫背ではこの下顎骨が影響を受けます。
猫背によって頭部が前方へシフトすると、下顎骨はその重みなどによって前下方へと位置が変わります。
特に、下顎骨が前方へ位置を変えると、口を閉じたときに上の歯と下の歯の噛み合わせが変わります。
本来口を閉じたときには、下の歯は上の歯よりも口腔側、やや後ろ側に位置しています。
しかし、下顎骨が前方へ位置を変えたことによって、上の歯と下の歯それぞれの先端が直接ぶつかるかたちになってしまうのです。
下顎骨には一般的に知られている咀嚼筋4筋の他に、顎から頸にある舌骨を経由して肩甲骨や鎖骨に付着する筋肉や、下顎骨から直接鎖骨へ付着する筋肉があり、下顎骨を下へ引き下げ口を大きく開ける作用に関係しています。
頭部が前方にシフトすると、下顎骨と鎖骨や肩甲骨の距離がのびるために、下顎骨と鎖骨、肩甲骨を結ぶ筋は常にストレッチされ筋が硬くなったり下顎骨を下へ引っ張ることにつながる可能性もあります。
さらに、胸式呼吸ではあまり多くの空気を吸えないのですが、十分な空気が吸えないと苦しくなるため、代償する形で鼻呼吸から口呼吸へと呼吸様式も変化していきます。
これらにより、猫背を長期間続けていると、徐々に口をあけっぱなしの状態になってしまうのです。
噛み合わせは歯並びへも大きく影響します
歯は本来、根の部分で顎の骨にしっかりと固定されているので、動くことはありません。
そのため、成長して永久歯が生え、ある程度歯並びが決まると、その後はほぼ変化することは無いだろうと考えている方が大半なのではないかと思います。
しかし、生活習慣などによって、歯は動くことがあるのです。
猫背による下顎骨の位置の変化で上の歯と下の歯の先端同士が咀嚼等のたびに直接ぶつかるようになると、またそのような状態が長期間続くと、歯は少しずつ動いていきます。
上顎と下顎の位置関係がずれると、奥歯でも噛み合わせは変化します。
すると、咀嚼のたびに奥歯の一部分がぶつかりやすくなることでかかる力が集中し、これによって歯は動かされてしまい、歯並びが悪くなっていくのです。
また、前歯は唇と下の作用を受けています。
唇は前歯を前方から支え、前歯が前方へ傾かないように抑えています。
一方で、歯の内側からは舌がこれを支えています。
つまり前歯、特に上の歯は唇と舌とで押さえられている状態にあるのです。
しかし、猫背によって口が開きっぱなしになると、前歯の前方からの支えが弱くなります。
また、舌の筋は後方(喉側)へと牽引される形になり、前歯を口腔側から支えることができなくなります。
すると、歯が前方へ傾く出っ歯になったり、歯並びが変化してしまうのです。
(まとめ)歯並びと猫背にはどんな関係があるの?
猫背は長期間続くと、噛み合わせを変化させることで歯の一部分に力が集中し、歯並びを変化させます。
また口が開きっぱなしになると歯の支えが弱くなり、特に前歯の生える方向が変化して歯並びが変わっていきます。
猫背とは、背骨の胸より上にあたるところで前側へのカーブが強くなり、頭は前下方へ出っ張ったような姿勢になります。
猫背が長く続くと、腹式呼吸が難しくなり、呼吸の際に胸が広がる胸式呼吸へと呼吸様式も変化していきます。
猫背で頭部が前方に位置すると、下顎骨も前方へ突き出たような状態になります。
また腹式呼吸から胸式呼吸へと呼吸様式も変化していき、そのために口呼吸するようになるため、口が開きっぱなしの状態にもなるのです。
猫背により下顎骨の位置が変化すると、噛み合わせが変化することによって歯並びが変わります。
また口呼吸によって口が開きっぱなしになると、歯の支えが弱くなるために出っ歯になったり歯並びが変わってしまうのです。