歯と歯の間にすき間がある状態のすきっ歯(空隙歯列)は、生まれつきの原因や癖などの習慣が原因で起こります。
すきっ歯は見た目に影響を与えるだけでなく、虫歯や歯周病の原因になったり、発音が難しくなったりもします。
すきっ歯は歯科で矯正することが可能で、一般的な歯並びの矯正以外の方法で治すこともできるため、選択肢を知っておきましょう。
ここでは歯科医院でおこなうことができる「マウスピース矯正」「セラミック矯正」の2種類の矯正方法とかかる費用、期間を特徴と合わせて紹介します。
目次
すきっ歯とは?
すきっ歯とは、歯と歯の間にすき間がある状態をいい、歯科ではすき間のある歯並びを「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼びます。また、上の前歯の中央にすき間がある状態を「正中離開(せいちゅうりかい)」と呼びます。

厚生労働省がおこなう歯科疾患実態調査(平成28年)では、12歳~20歳の男女の前歯の不正咬合(歯並びや噛み合わせがよくない状態)として、「空隙」は「叢生(前後にがたがたとズレている状態)」の26.4%に次いで多く、全体の10.4%の方が報告しています。
すきっ歯の原因
歯の先天性欠如・過剰歯
永久歯は親知らず(智歯)を除くと全部で28本あります。
しかし「先天性欠如」と呼ばれる、生まれつき永久歯が1,2本生えてこない歯があると、生えてくるはずの場所にスペースができてしまいすきっ歯になります。特に前から2番目の歯が欠如していると前歯にすき間ができます。
逆に、通常より歯が多く生えている「過剰歯」と呼ばれる歯が上の前歯の間に埋まっている場合、前歯の中央にすき間ができすきっ歯の原因になります。
舌で前歯を押す・歯ぎしりをする癖がある
正しい舌の位置では上顎を押す形になっていますが、日常的に上下の前歯の間に舌を突出する癖(舌突出癖)がある方や、食べ物などを飲み込むときに舌を前に出して飲み込む癖がある方は、前歯が舌に押されることにより歯と歯の間にすき間ができてしまいます。
また、舌の癖と同様の理由で子どものころの指しゃぶりの癖が影響することや、歯に圧力がかかる歯ぎしりなどもすきっ歯の原因のひとつです。
歯茎が下がる
すきっ歯になる後天的な原因には「歯周病」があります。
歯周病とは、歯と歯茎のすき間に磨き残しがあることで歯垢(プラーク)が溜まり、歯垢のなかの細菌によって歯茎が炎症を引き起こし、歯を支える骨(歯槽骨)が溶かしてグラグラにしてしまう病気です。
歯周病により歯が動いたり、抜けてしまうことですきっ歯になることがあります。
すきっ歯によるデメリット
見た目が悪い
すきっ歯は見た目に影響を及ぼします。
歯と歯の間にすき間があるため、周囲に自分の歯を見られるのが嫌になってしまった人は、人と接することを避けたり、笑顔が少なくなったりします。
虫歯や歯周病の原因になりやすい
すきっ歯は歯と歯の間に食べ物が挟まりやすく、歯磨きがしづらくなります。そのため、磨き残しの部分に歯垢(プラーク)が溜まり、虫歯や歯周病の原因となります。
発音に影響が出ることも
すきっ歯の場合、発音に影響が出ることもあります。
歯と歯の間にすき間があるため、そこから空気が漏れてしまいうまく発音できません。特に「歯擦音」と呼ばれている、前歯を擦り合わせて音を出す必要があるサ行の発音が難しくなります。
すきっ歯の矯正方法
すきっ歯は、マウスピース矯正やセラミック矯正で治すことができます。
特に前歯のすきっ歯は、第一印象を左右するもの。
気になる人はそれぞれの矯正方法について確認してみましょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明な目立ちにくいマウスピースを歯にはめることで、少しずつ歯を移動させる方法です。
いわゆる歯並びの矯正具のように、長い間続ける必要はありません。
1日20時間程度の装用が必要ではありますが、歯磨きや食事などの際は取り外すことができます。
また、マウスピースは薄く、透明な素材で作られています。
そのため笑った際もわかりにくく、見た目の影響が少ないこともメリットです。
マウスピース矯正の費用
マウスピース矯正の治療は保険適用外になるため、ある程度まとまった費用が必要です。
具体的な金額は歯科医院によっても異なりますが、湘南マウスピースの場合は両顎で138,000円(税込)〜程度となっています。
マウスピース矯正に必要な期間
マウスピース矯正は個人差があるものの、1年~3年程度は継続しておこなわなければいけません。
なお、1日20時間というマウスピースの装着時間を守れなかった場合やうまく歯が動かなかった場合など、想定通りの効果が得られない可能性もあります。
マウスピース矯正の治療の流れ
マウスピース矯正の治療の流れは、下記の通りです。
1.歯科医院で歯の写真撮影や診察をおこなう
2.具体的な治療プランや見積もりについて説明を受ける
3.口腔内を撮影し、治療過程のシミュレーション作成(希望した場合のみ撮影)
4.治療のシミュレーションを確認し(3にて希望した場合)、マウスピースを発注する
5.マウスピースの装着方法や治療の進め方の説明を聞き、治療をスタートする
6.1~2週間に1度、自分でマウスピースを交換しながら治療を進める
7.1か月~3か月に1度程度通院して、経過を確認する
8.平均4か月~2年ほど経過後、歯並びが改善したことを確認して固定器具を装着する
9.定期メンテナンスをおこなう
10.平均4か月~2年ほどして歯が動かなくなってからリテーナーを外す
セラミック矯正
セラミック矯正は、すきっ歯にセラミックで作ったクラウンと呼ばれる被せ物をすることで、歯並びを矯正する方法です。
歯そのものを動かす通常の矯正治療とは異なり、今ある歯の上にセラミックを被せることで施術が完了するため、通常の矯正治療よりもスピーディに治療を完了させることができます。
セラミックは、自分の歯の色に合わせて色を調整することができるので、隣の歯と比べて不自然に白くなってしまうということはありません。
一部の素材を除き、基本的には治療後に変色してしまうこともなく、自分の歯と変わらずに長期間使用できます。
ただし、セラミック矯正では歯に被せ物をすることになるため、小さめのすきっ歯であってもある程度は歯を削らなければいけません。
歯並びによっては、神経を抜いたり抜歯をしたりすることもあるため、健康な歯に手を加えたくないという人には適していないといえるでしょう。
具体的な施術内容は、歯の状態によって異なります。
具体的にどのような治療になるのかが知りたい場合は、セラミック矯正を取り扱っている歯科医院で相談してみてください。
部分矯正と全体矯正
歯の一部だけが気になる人は治したい部分だけを治療することもできます。
前歯のすきっ歯のみ、数本だけ治療するということも可能です。
必要なところだけスピーディで自然に治せるというのが、セラミック矯正の特徴です。
なお、マウスピース矯正でも全体矯正ではなく前歯のみを矯正するといったことは可能です。
どの治療が最適なのかは人それぞれなので、まずは歯科医で確認してみましょう。
セラミック矯正の費用
セラミック矯正の費用は、施術を依頼する歯科医院や使用するセラミックの種類、矯正する歯の本数などによって変わります。
比較的安価なオールセラミックの場合、6本で50万円~60万円程度が目安です。
ただし人によって、セラミッククラウンの作製費用以外に治療費が必要なのかは異なります。
実際にかかる費用も歯の状態によって変わるため、詳細が知りたい場合は、歯科医院で見積もりを取りましょう。
セラミック矯正に必要な期間
セラミック矯正の治療は、下記の手順で進みます。
1.矯正についての説明を受けた後、矯正をおこなう歯を削り、仮の歯を被せる
2.仮の歯を外してオールセラミックの歯を被せて固定する
3.経過観察のために通院をして、噛み合わせ等の調整をおこなう
ただし、神経や歯を抜く場合は、これよりも多くの手順や時間がかかる場合があります。
相場より安いすきっ歯矯正は危険?
すきっ歯の矯正方法は、ひとつではありません。
同じ矯正でも、マウスピース矯正やセラミック矯正とは異なる方法で矯正がおこなわれることもあります。
すきっ歯を少しでも安く矯正したいと考えている人は、安価な矯正方法を選択することもあります。
しかし、治療方法を決める際は費用だけでなく治療方法の特徴についても確認しておきましょう。
例えば、セラミック矯正よりも安価なレジンで歯を覆うコンポレットレジンという矯正方法があります。
手軽で費用を抑えた方法ですが、仕上がりがセラミックほど美しくない場合があります。
何を重視するのかによって、施術を選択するように検討してください。
すきっ歯矯正後に後戻りすることはある?
マウスピース矯正のように歯を動かして固定させる矯正方法の場合は、一度矯正した歯が再度動いてしまい、再びすきっ歯ぱになってしまうことがあります。
一方、セラミック矯正の場合は、歯そのものに被せ物をする治療方法のため、後戻りしてしまうことはありません。
すきっ歯の矯正の症例写真
下のすきっ歯でお悩みのお客さまです。下の前歯4本のプレミアムダイヤモンドセラミックで、すきっ歯と色、形の美しく整った自然な前歯に改善させていただきました!プレミアムダイヤモンドセラミックは、優れた強度も兼ね備えています。
「すきっ歯と出っ歯を改善したい!」とご来院されたお客さま。セラミッククラウン法でしっかり中に入れて、歯の色も綺麗になりました。プレミアムダイヤモンドセラミックは透過性が高いため、自然な仕上がりを実現します。
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まとめ
すきっ歯(空隙歯列)とは、歯と歯の間にすき間がある歯並びのことをいい、そのなかでも上の前歯の中央にすき間がある状態を「正中離開」と呼びます。叢生や上顎突出(出っ歯)に次いで多い歯列トラブルです。
すきっ歯の原因には、
・歯の先天性欠如・過剰歯により正しい歯並びにならない
・舌で前歯を押す、歯ぎしりをする癖があるため、前歯に負担がかかる
・歯周病により歯茎が下がり、歯が動いたり、歯が抜けたりする
などが挙げられ、先天的なものと後天的なものがあります。
すきっ歯を放置することで、見た目のイメージに影響を与えるだけでなく、歯と歯の間に食べ物が挟まりやすいことにより歯垢が溜まり、虫歯や歯周病の原因になります。また、歯と歯の間から空気が漏れることで発音も難しくなります。
これらのデメリットを解消するために、マウスピース矯正やセラミック矯正で治療をおこなうことをおすすめします。それぞれで特徴や治療期間、費用が異なるため、歯科医師や外科治療を得意とする美容外科医師に相談して、最適な治療方法を選択しましょう。