歯が痛い時、そこには必ず何らかの原因が存在します。
虫歯が代表的ですが、それ以外にも歯周病や、見えないところでの歯の破折などさまざまな原因がありますので、早めに歯科で調べてもらうことが先決です。
この記事では、歯が痛い時に考えられる原因や対処法について詳しく解説していきます。
歯が痛い(歯痛)が起きるメカニズム
私たちに見えている歯は、表面を覆う「エナメル質」という部分です。
エナメル質には神経が通っていないため、痛みを感じることはありません。
その内側に「象牙質」、さらにその内側にあるのが「歯髄」です。
象牙質には神経につながる管が通っているため、エナメル質がはがれて露出すると鋭い痛みを感じます。
いわゆる「知覚過敏」と呼ばれる症状は、この象牙質への刺激が原因です。
さらにその内側にある「歯髄」は、俗にいう「歯の神経」ですから、もちろん痛みを感じます。
虫歯が進行すればするほど歯髄に及んでいき、耐えがたい痛みを感じるようになります。
もう1つ、一般の歯科に痛みで来院する患者さんに多くみられるのは「歯根膜の痛み」です。
歯根膜は、歯根と歯槽骨の間にある組織で、歯をアゴの骨に固定する役割をもっています。
ここに虫歯からの細菌感染や外部からの刺激が起こると、炎症が生じて痛みにつながります。
特に「ものを噛んだ時に痛い」場合は、歯根膜の炎症が原因であるケースが。
その他、歯周病などで歯茎から痛みが生じる場合もあります。
歯が痛い(歯痛)時の原因と対処法
ここまで見てきたように、歯の痛みは「歯自体からくる痛み」と「歯の周りの組織からくる痛み」に大きく分かれます。
それぞれの代表的な原因と対処法をまとめました。
歯からくる痛み
歯自体の原因は、主に以下の3つです。
むし歯(虫歯)
虫歯は、ミュータンス菌などの細菌が酸を出して歯に穴を開ける病気です。
進行して歯髄に近づけば近づくほど、痛みが増強していきます。
放置すると、そのうち神経がダメになってしまうため一時的に痛みを感じなくなりますが、そうなると細菌がさらに奥深くへ進んでしまうので危険です。
進行した虫歯は放っておいても治りませんので、必ず歯科医院で治療を受けましょう。
知覚過敏(象牙質知覚過敏)
知覚過敏は、熱いもの・冷たいものを食べた時や歯磨きをしている時に、歯がしみたり痛んだりする状態です。
本来はエナメル質の内側にある象牙質が、何らかの原因でむき出しになってしまうことで起こります。
原因としては、加齢や歯周病によって歯茎が下がってしまうことや、歯の磨きすぎによるエナメル質のすり減りなどが代表的です。
また、炭酸飲料や柑橘系果物のとりすぎも、エナメル質を溶かしてしまうことがあります。
知覚過敏の症状が治まらない場合は、むき出しになった象牙質を覆う治療が必要です。
フッ素が配合された薬や、レジン(樹脂)などが使われます。
- 関連記事:歯磨きで歯がしみる原因は知覚過敏|症状や治療について説明
- 知覚過敏について説明します。
歯の破折
歯が折れたり欠けたりして、その部分が歯髄に達している場合も激しく痛みます。
特に歯の根っこが折れてしまう「歯根破折」は、自分では見えないため、原因不明の痛みに悩まされることもあります。
歯根破折が起きやすいのは、神経を取った歯です。
神経を取ると、本来の状態に比べて強度が低くなるため、歯ぎしりや食いしばりなどの蓄積で破折しやすくなります。
破折した場合、抜歯が検討されますが、状態によっては歯科用の接着剤を使って歯を修復する保存療法が行なわれることもあります。
歯茎(歯肉)からくる痛み
歯茎由来の痛みには、次のようなものがあります。
歯肉炎
歯肉炎は、歯茎が炎症を起こした状態です。
その多くは、歯と歯の間、または歯と歯茎の間にたまった汚れが原因となります。
見た目にも歯茎が赤く腫れますし、歯磨きの際に出血することが多いため自覚しやすいです。
放っておくと歯周炎につながりますので、歯科医院で正しいブラッシング方法を習い、日々実践する必要があります。
歯周病(歯槽膿漏)
歯周病は、歯と歯茎のすき間(歯周ポケット)に細菌が入り込むことで起こる病気の総称です。
上でご説明した「歯肉炎」と、歯を支えている歯槽骨が炎症によって破壊される「歯周炎」をまとめて「歯周病」と呼んでいます。
歯槽骨が溶けると歯がぐらつき、最終的に歯を失う危険性があるため、早めの治療が重要です。
通常は、原因となっている歯垢(プラーク)や歯石を歯科医院で取り除いた上で、自宅でセルフケアしながらプラークコントロールをします。
それでも改善されない場合は、外科的に歯周ポケットを除去する手術が行なわれることもあります。
親知らず
10代後半~20代前半に生えてくる親知らず(第三大臼歯)は、何かとトラブルの起きやすい歯です。
きれいにまっすぐ生えてくればいいのですが、人によっては斜めや横向きに生えてきたり、歯茎の中に埋もれたまま出てこなかったりすることがあります。
そうなると細菌が繁殖して痛みが出ることがあるため、早めの治療が必要です。
多くの場合、親知らずを抜歯することになります。
歯髄・歯根からくる痛み
歯の神経や根っこに原因があるケースもあります。
歯髄炎
歯髄は、神経や血管の通った組織です。
ここに炎症が起きた状態を「歯髄炎」といいます。
歯髄炎の原因でもっとも多いのは虫歯です。
その他、外傷や歯周病などが引き金になるケースもあります。
軽度であれば、薬剤を詰めて歯髄を保存する治療を行ないますが、進行している場合は神経を取ることになるかもしれません。
歯根膜炎
歯とアゴの骨をつなぐ「歯根膜」に炎症が起きた状態です。
細菌感染によるものと、噛み合わせの悪さや外部からの刺激による非細菌感染によるものがあります。
すでに神経を取った歯に起こることも少なくありません。
治療としては、歯の根元の消毒が一般的です。
噛み合わせの調整や、歯ぎしり・食いしばりの治療が必要になることもあります。
歯が痛いが歯科に行けないときの対処法
歯が痛い時は、なるべく早く歯科医院に駆け込むことが一番ですが、どうしても難しい場合は以下のような対処法が考えられます。
市販の痛み止めの薬を飲む
とりあえず痛みを和らげるために、市販の鎮痛剤を服用する方法です。
痛みの原因物質である「プロスタグランジン」を抑える「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」が、もっとも広く使われています。
ただし、あくまで対症療法に過ぎませんので、時間ができたら早めに歯科医院にかかることが大切です。
歯痛に効果のあるツボを押す
歯痛を和らげる効果があるとされるツボを押すことでも、多少の効果が期待できる場合があります。
代表的なのは、手の甲側の親指と人さし指の付け根あたりにある「合谷(ごうこく)」というツボです。
ここは万能のツボとも呼ばれ、さまざまな痛みに効果があるとされています。
また、「歯痛点」というツボもあります。
手のひら側の中指と薬指の付け根部分です。
すぐに薬を飲めない場合は、何度か押して刺激してみましょう。
歯に痛みを感じたらすぐに歯科に行くことが大切
歯の痛みを感じても、「そのうち治まるだろう」と放置する人が多いのですが、それはあまりおすすめできません。
特に虫歯や歯周病による痛みを放置すると、歯を失うリスクがあるほか、最終的に細菌が血管を通して全身に運ばれてしまうこともあります。
実際、歯のトラブルが心臓病などを引き起こす可能性も指摘されているため、「たかが歯の痛み」と油断はできないのです。
歯が痛む時は必ず何らかの原因がありますから、すぐに歯科医院に行って診てもらいましょう。
(まとめ)歯が痛い(歯痛)時の原因や応急処置方法を紹介|虫歯以外で痛みが出ることもある
歯の痛みは、表面に見えている「エナメル質」の奥から起こります。
エナメル質の内側にある「象牙質」が露出すると知覚過敏に、さらにその内側にある「歯髄」に炎症が起きると歯髄炎となり、痛みが生じるのです。
また、歯茎や歯根膜などに原因がある可能性もあります。
歯痛は、「歯自体からくる痛み」と「歯の周りの組織からくる痛み」の2つに大きく分かれます。
歯自体からくる痛みとしては、虫歯や、象牙質の露出による知覚過敏、歯の破折などが代表的です。
歯の周りの組織からくる痛みには、歯周病や親知らずのトラブル、歯髄炎、歯根膜炎などがあります。
歯が痛む時はすぐに歯科にかかるのが一番ですが、どうしても行けない場合は、痛みを和らげるために市販の鎮痛剤を飲む、歯痛に効くツボを押してみる、などしてみましょう。
ただし、いずれも対症療法に過ぎませんので、なるべく早く歯科で診てもらうことが大切です。
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