プラークコントロールが、きほんの“き”

医師と二人三脚で取り組む

プラークコントロールが、きほんの“き”

むし歯と歯周病は歯を失う二大原因ですが、どちらも歯についたプラークから始まります。これらの病気を予防し、お口の健康と美しい歯を保つために欠かせないのがプラークコントロールです。

プラークとは歯についている白いネバネバしたもので、中身は細菌の塊です。それも、細菌同士が強力に結びついた「バイオフィルム」の状態なので、抗菌薬などは中に入れません。同じくバイオフィルムである排水口のぬめりが、洗剤をかけただけでは落ちないのと同じです。そのため、プラークを落とすには歯ブラシでこするという物理的な手段が必要になります。

ただし、ていねいに歯みがきをしてもプラークを完全になくすことはできません。プラークコントロールは、むし歯や歯周病にならない程度にプラークがつくのを防ぎ、お口の中を清潔にしておくことだと考えればいいでしょう。

プラークコントロールは、自分で行うセルフケアと、歯科医院で受けるプロフェッショナルケアに大きく分けられます。毎日のセルフケアを基本に、それでは対応できないところを専門家が定期的にケアします。この両方があって、より確実なプラークコントロールができるのです。

今回はセルフケアについて紹介します。

正しい歯みがき法をマスターしよう

プラークは、歯ぐきの上についている「歯肉縁上プラーク」と、外から見えないポケットの中にある「歯肉縁下プラーク」に分けられます。セルフケアのターゲットは、歯肉縁上プラークです。

歯ぐきより上のプラークをとることは簡単そうですが、正しい方法で磨かないと十分な効果を得ることはできません。まず正しい歯ブラシの持ち方や当て方を身につけましょう。

歯ブラシの持ち方

歯ブラシは、ペンを持つように指先で持ちます。力が入りすぎず、小刻みに動かせます。

歯ブラシの当て方

歯の表面や歯と歯の間は、毛先を歯に直角に当て、横または縦方向に小刻みに往復させる「スクラッビング法」(1)で磨きます。一方、歯肉溝やポケットには、毛先を歯に対して45度の角度で当てる「バス法」(2)が効果的です。

1 スクラッビング法

毛先を歯に直角に当て、横または縦方向に小刻みに往復させる。

スクラッピング法

2 バス法

毛先を歯に対して45度の角度で当て、横方向に小刻みに往復させる。

バス法

歯の裏側の磨き方

前歯の裏側は、歯ブラシを立て、ブラシのつま先部分で磨きます(3)。奥歯の裏側やかみ合わせ面は、歯ブラシを水平に持ち、歯並びに合わせて角度を変えながら磨きます。

3 前歯の裏側の磨き方

前歯の裏側の磨き方

磨き残しをなくすコツは、磨く順番を決めておくことです。上下ともいちばん磨きにくい歯の裏側から始め、歯の表側、かみ合わせの部分という流れにするとよいでしょう。

むし歯になりやすい歯間は、専用ツールを使って

きちんと歯みがきしても、歯ブラシですべての縁上プラークを除去することはできません。とくに、むし歯になりやすい歯と歯の間は、1日1回、歯みがき後にデンタルフロスや歯間ブラシを使ってきれいにしましょう。こうした歯間清掃は、男性の約3割、女性は半数にとどまっており1、さらなる普及が望まれます。

デンタルフロス

デンタルフロスは、歯ブラシや歯間ブラシが届かない歯と歯の間や歯並びが悪いところに適しています。ロールタイプのフロスは適当な長さに切り、両手の中指に巻きつけて使います。柄のついたタイプもあるので、使いやすいものを選びましょう。

フロスは歯と歯の間に入れ、のこぎりを引くようにゆっくり動かしながら歯ぐきの上までおろします。次に、歯の側面をこすりながら歯の先端まで持っていきます。

歯間ブラシ

歯間ブラシは、歯間部に隙間があるところに適しています。隙間に合わせてちょうどよいサイズを選びましょう。サイズが合っていないと歯肉を傷つける恐れがあります。ブラシは歯の表側から直角に入れ、前後に数回動かしてプラークをかきだします。

器具の選び方や使い方は、はじめに歯科医院で相談するとよいでしょう。

1)厚生労働省, 平成28年歯科疾患実態調査

《参考資料》

加藤熈(編著), 歯科衛生士のための最新歯周病学. 医歯薬出版 2018

朝波惣一郎(著)ほか, このまま使える Dr.もDHも!歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本 患者教育に重要なトピック14. クインテッセンス出版 2019

8020推進財団, 歯と口のケアからはじめる健康長寿 2017(一般向け小冊子)

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