この記事の監修者
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歯科統括院長前田 純歯科医師 - 歯科医師。2009年3月奥羽大学歯学部歯学科卒業。同大学歯学部附属病院にて勤務のあと、2012年4月から一般歯科クリニックにて勤務。2016年4月から湘南美容歯科大阪心斎橋院にて勤務を開始し、2019年10月より湘南美容歯科統括院長就任。
前歯が出ているような気がする。どのくらい歯が出ていると出っ歯になるのか、出っ歯は治療すべきなのか。本記事ではこのような疑問にお答えします。
出っ歯の定義や原因、セルフチェックの方法から、放置した場合のリスクや治療方法までを解説します。
そもそも出っ歯とは?
出っ歯とは、歯列不正の一種で、専門用語では「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼ばれます。上の前歯が下の前歯よりも前方に突き出た状態を指します。また診断の基準には、上の前歯の先端が下の前歯の先端よりどれだけ前に出ているかを表す「オーバージェット」と呼ばれる指標が用いられます。
一般的には、オーバージェットが2〜3mmの範囲に収まっていれば正常とされます。6mm以上になると明らかに基準を超えているとされ、「出っ歯」として扱われます。見た目の印象だけでなく、噛み合わせなど、口腔機能への影響が起こりやすくなります。
厚生労働省の「歯科疾患実態調査(平成28年)」には、日本人の12〜20歳のうちのおよそ6.5%が出っ歯に該当するという報告があります。
骨格性上顎前突
骨格の発達度合いが主な要因で出っ歯になるケースです。上顎の骨が過度に発達している、あるいは下顎の成長が抑制されていると、上下の顎のバランスが不均衡になる症状が起こります。「歯並びがきれいでも口元が前に出て見える」といった印象があることが特徴です。
歯槽性上顎前突
歯の位置や角度によって出っ歯になるケースです。前歯が前方に傾いて生えることで、上下の前歯の間に隙間が生じます。このタイプは、口が閉じにくい、口腔内が乾燥しやすい、虫歯・歯周病・口臭の原因になるといった影響も出るため、健康面からの配慮も必要です。
出っ歯の原因
出っ歯になる主な原因は、「遺伝的特徴」と「生活習慣や癖」の2つに分けられます。
遺伝的要因
出っ歯の原因としてまず挙げられるのが、顎の骨格や歯の大きさ・生え方といった先天的な特徴です。例えば下顎に比べて上顎が大きく発達している場合は、上の前歯が前に出たような状態になります。また顎に対して歯のサイズが大き過ぎて歯列に収まらない場合や、歯の生える位置に偏りがある場合も出っ歯の原因となることがあります。
このような特徴は親から子へ遺伝することが多く、家族に出っ歯の人がいる場合、同じような特徴が現れる可能性があります。
生活習慣や癖
出っ歯は、生まれ持った特徴だけでなく、幼少期からの生活習慣や癖によっても発生・悪化することがあります。とくに成長期には顎の骨が柔らかく、わずかな力でも長時間・長期間にわたり加わり続けると歯や骨の位置に影響を与えます。指しゃぶり、爪を噛む、舌で前歯を押す、といった癖はその代表例です。
また口呼吸やうつ伏せも出っ歯の要因となることがあります。口呼吸により舌の位置が通常よりも下がり、口内や頬など口周り全体の筋肉のバランスが崩れるケース、うつ伏せにより長時間にわたり顎に力が加わることで、骨格の成長に影響を与えるケースなどが挙げられます。
出っ歯のセルフチェック方法
出っ歯かどうかを正確に診断するには、歯科医院でレントゲン撮影や咬合検査などの精密な診査を受ける必要があります。しかし、傾向の確認程度であればセルフチェックも可能です。自宅でできる3つの方法をご紹介します。
Eラインを確認する
Eライン(エステティックライン)とは、顔を横から見たときに、鼻先とあご先を直線で結んだラインのことです。このラインに対して上下の唇がどの位置にあるかで、口元のバランスが評価されます。
一般的には、上下の唇がEラインより少し内側に収まっているのが理想的とされますが、もし唇がEラインよりも明らかに前方に突き出している場合、出っ歯の可能性があります。
関連記事|矯正で出っ歯の横顔を改善できる?矯正による横顔の変化やメリットを解説
唇が閉じるか確認する
出っ歯の状態では、上の前歯が前方に突き出しているため、唇が閉じにくくなっています。無理に力を入れない状態で口を閉じたときに、唇がしっかり閉じずに前歯が見えてしまう場合や、口を閉じるとあごの下に梅干し状のシワができるようであれば、出っ歯の可能性があります。
また、口が常に半開きの状態で、無意識に口呼吸になっている場合も要注意です。
サ行とタ行の滑舌を確認する
前歯の位置が前方にあることにより、発音のしにくさが生じることがあります。歯の隙間から息が漏れやすくなっているため、特に「サ行」や「タ行」といった、舌先を上前歯に近づけて発音する音が出しにくい傾向があります。
鏡の前で「さしすせそ」「たちつてと」と発音してみて、発音が不明瞭だったり、音が漏れる感覚がある場合には、出っ歯が原因となっている可能性があります。矯正治療によって改善されることもあります。
出っ歯を治療しないリスク
出っ歯は見た目の印象だけでなく、口腔内の健康にも影響を及ぼすリスクがあります。出っ歯を放置することによって生じる主なリスクについて解説します。
見た目にコンプレックスを感じる
出っ歯は横顔や正面の印象に特徴があり、口元の突出感が気になるという方は少なくありません。感じ方によっては、会話に苦手意識を持ったり、笑顔に自信が持てなくなるケースもあります。
しかし、出っ歯は矯正治療による改善が可能です。歯並びが整うと、突出感やEラインが改善されるため、コンプレックスの軽減が期待できます。
虫歯や歯周病が起きやすい
前歯が突出していると、口が閉じづらいため口内が乾燥しやすくなります。口腔内の乾燥は唾液の自浄作用を低下させ、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすい環境をつくります。
また歯並びに乱れがあるケースでは、歯ブラシが届きにくい箇所が発生し汚れが残りやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを高めます。出っ歯の矯正によって歯列が整うと、こうしたリスクの軽減が期待できます。
噛み合わせが悪い
出っ歯の状態では、上下の前歯がうまく噛み合わないため、奥歯に負担が偏る傾向があります。顎関節に負荷が集中し痛みを引き起こすこともリスクのひとつです。
また嚙み合わせが悪いと、十分に咀嚼しないまま食べものを飲み込んで、胃腸に負担をかけることにも繋がります。
歯の健康寿命が短くなる
出っ歯によって前歯が噛み合わない状態が続くと、奥歯にかかる負担が増大します。本来なら前歯と奥歯で分散されるはずの負荷が奥歯に集中するため、歯が欠けたり割れたりするトラブルが起きやすくなります。長期的には歯の寿命そのものを縮めてしまう可能性も考えられます。
出っ歯の治療方法
出っ歯を治療する方法は基本的に歯列矯正となります。代表的な治療法である、マウスピース矯正・セラミック矯正・ワイヤー矯正について、それぞれの特徴やメリット・デメリット、治療期間・費用の目安をご紹介します。
| 治療方法 | メリット | デメリット | 治療期間 | 費用(税込) |
|---|---|---|---|---|
| マウスピース矯正 |
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部分矯正:3〜6ヶ月 全体矯正:1~2年 |
部分矯正:10〜40万円 全体矯正:60〜100万円 |
| セラミック矯正 |
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1ヶ月〜1ヶ月半 ※神経治療が必要、施術本数が多いなどのケースでは3ヶ月以上かかることも |
9〜15万/本 ※素材・本数によって変動 |
| ワイヤー矯正 |
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1〜3年 | 70〜150万円 |
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを治療の段階に応じて交換しながら歯を動かす方法です。装置が目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外しができるため、生活への影響が少ない点が大きな特徴です。出っ歯のような前歯の突出も、マウスピースでコントロール可能な範囲であれば改善が期待できます。
一方で、すべての症例に対応できるわけではなく、重度の出っ歯や骨格に問題があるケースでは、適応外となることもあります。また、1日20時間以上の装着が推奨されており、装着時間が短いと計画通りに治療が進まない可能性があります。
治療期間は、部分矯正で3〜6ヶ月、全体矯正では1〜2年程度が目安です。費用については部分矯正の場合は10〜40万円、全体矯正では60〜100万円が目安です。
湘南美容歯科の出っ歯(上顎前突)の矯正について詳しくはこちら>
湘南美容歯科のマウスピース矯正について詳しくはこちら>
セラミック矯正
セラミック矯正は、歯を削ってセラミックの被せ物を装着することで、短期間で見た目を整える審美治療です。出っ歯の場合、歯の角度や位置に合わせてセラミックを加工することで、口元の印象を大きく変えることが可能です。
治療期間は1〜3ヶ月程度で完了することが多く、通院回数も抑えられます。一方で健康な歯を削る必要があるため、歯の寿命を短くしてしまうおそれがあります。また歯の状態によっては、神経を取る処置が必要になるケースもあります。
費用の目安は、1本あたり9〜15万円程度で、例えば4本を対象にした場合は36〜60万円程度となります。治療の内容や素材によって費用は異なるため、事前のカウンセリングで詳細を確認することが大切です。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットという装置を取り付け、ワイヤーで力をかけて歯並びを整える従来型の矯正方法です。適応範囲が広く、出っ歯に限らず、複雑な歯列不正にも対応できる点が最大の利点です。
装置が目立ちやすいというデメリットはあるものの、現在も多くのクリニックで用いられています。治療期間は比較的長く、一般的には1〜3年ほどかかることが多いです。費用の目安は70〜100万円程度で、治療範囲や期間によって前後します。
※当クリニックでは、ワイヤー矯正の取り扱いはおこなっておりません。
出っ歯の治療に関するQ&A
出っ歯の治療を検討する際に多くの方が気にされる疑問にお答えします。
出っ歯は自力で治せる?
結論からいえば、出っ歯を自力で治すことはできません。成長が完了した大人の骨格はすでに固定されており、前歯を指などで押して治そうとする行為は、歯や歯茎、顎の骨に負担がかかるため危険です。歯並びが悪化するおそれもあるため、控えましょう。
出っ歯の根本的な改善には、クリニックでの専門的な診断と適切な治療が必要です。見た目だけでなく、噛み合わせや口腔内の健康を考えても、医師の判断に基づいた治療が推奨されます。
関連記事|出っ歯を押していたら治るの?正しい治療方法と費用の目安を解説
子どもの出っ歯はいつから治療する?
子どもの出っ歯を治療するタイミングは、「混合歯列期(こんごうしれつき)」と呼ばれる、乳歯と永久歯が混在している時期が一つの目安になります。個人差はあるものの、およそ7〜12歳頃の期間が該当します。
また上顎は8〜9歳頃までに完了し、下顎は10〜12歳ころまで成長を続けるという特徴があります。そのため7〜9歳頃に矯正治療を開始すれば、顎の骨の成長そのものをコントロールしやすくなります。
ただし具体的な開始時期はお子さまの成長や歯の状態によって異なりますので、まずはクリニックでの診断を受けることをおすすめします。
まとめ
出っ歯は、骨格の特徴や生活習慣など、さまざまな要因によって生じる歯列不正の一種です。見た目への影響だけでなく、虫歯や歯周病、咀嚼機能の低下など、将来的な口腔トラブルの原因にもなり得ます。
特にオーバージェットが6mm以上のケースは、矯正治療の検討をおすすめします。見た目はもちろん、歯の健康寿命が伸びることにもつながります。少しでも気になる方は、まずはクリニックに相談してみませんか。
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