食べ物は歯並びに影響を及ぼします
食べ物が柔らかくなると、噛み切る刺激の減少で顎の骨の発達が不十分になります。
すると、乳歯よりも大きめの永久歯が生える際に十分なスペースが確保できず、歯が斜めに生えるなど歯並びに影響を及ぼします。
一方、歯並びや噛み合わせが悪いと、硬いものを噛み切ることができにくくなるため、さらに柔らかい食べ物を好むという悪循環に陥ります。
歯並びと顎の骨の発達は関係しています
2~3歳までに生えてくる乳歯は、その後5~12歳までの間に永久歯に生え変わります。
一般的に永久歯は乳歯よりも大きく、特に前歯ではその傾向が強いため、歯が生え変わる時期には歯と歯の間に隙間がある程度にまで顎の骨が成長していることが望ましいとされています。
幼児期から学童期までの間は、切歯から小臼歯までの合計20本が生えていますが、その後小臼歯よりも奥に大臼歯が生えてくることで、歯は30本程度にまで増えます。
この間に顎の骨が成長し、歯並びも整えられていくのです。
男女差はあるようですが、一般的に上顎の骨は7~12歳、下顎の骨は12~17歳の間で成長します。
また、歯は同時期に一様に生え変わるのではなく、3~5年程度の年月をかけて少しずつ生え変わっていきます。
歯が生え変わる際に十分に顎の骨が発達、大きくなっていかないと、後から生えてくる歯にとって生えるためのスペースが十分ではなくなるために、生えてくる位置が前方(唇側)にずれたり、斜めに生えてきたりします。
八重歯がその典型例と言えるかもしれません。
このように、顎の骨の発達が、歯並びには大きく影響しているのです。
食べ物は顎の骨の発達に影響します
下顎骨のついた人の頭蓋骨を見たことがあるでしょうか。
それには必ずと言ってよいほど、歯がきちんとついています。
歯は、骨から生えています。
顎の骨には、歯が生えるための窪み、歯槽骨がありここから歯が生えてきます。
ですから、歯で噛むということは、歯を伝って歯槽骨、顎の骨へと刺激を与えることになります。
日本は豊かになり、昔のように野菜を生のまま食べたり、硬い魚などを食することが減ってきました。
一度で噛み切ることができ、ともすれば歯でなくても飲み込める程度に小さくすりつぶすことができるほどに柔らかい食べ物が増えてきています。
こうなると、歯で「噛む」ことが、非常に少なくなります。
すると、顎の骨への刺激がとても少なくなり、顎の骨の発達が十分ではなくなります。
近年、若者を見ると、えらがなく顎がスリムで尖った印象の方が多いのは、このためとも言われています。
特に前歯は、話すときや笑う時に人から見える位置にあるので、歯並びは人に与える印象にも影響します。
しかし、硬いものを食べる機会がなければ顎の骨があまり大きくならず、けれど乳歯よりは大きな永久歯が生えてくるため、歯が斜めになったり唇側に出っ張って生えてくるなど、歯並びが悪くなってしまうのです。
食事が歯並びに影響し、逆に歯並びは食事へも影響します
食生活の変化が、顎の骨の発達と歯並びに影響することは良く知られていますが、実はこれとは逆に、歯並びも食事に影響を与えるのです。
歯並びが悪いことで噛み合わせが悪くなると、前歯で食べ物を噛み切ることが難しくなります。
そうすると、どうしても噛み切りやすい、柔らかい食べ物へと食事内容がシフトしていきます。
また、食べ物を飲み込む(嚥下)できる程度にすりつぶす際には、奥歯である臼歯を使いますが、臼歯で噛む機会が増えると下顎の骨が後方、つまり後頭部側へ位置が変化していきます。
これによって前歯の噛み合わせは変化します。
本来、下の歯の先は上の歯の先端よりやや内側に当たるものですが、下顎の骨が後方へずれることで下顎の骨が上の歯と適切な位置で合うことがなく、このために前歯で食べ物を噛み切ることが難しくなるのです。
これを予防するためには、弾力性があったり硬い食べ物を、前歯で噛み切るという機会を増やすことが重要です。
一般的にいわれているのはスルメや生のイカ、タコ、鮭を干した鮭とばなどが良いといわれています。
一度で噛み切ることができず、何度も前歯で噛むことになるので、前歯への刺激が増え、歯並びや噛み合わせが変化していくでしょう。
(まとめ)歯並びは食べ物で変化する?
柔らかい食べ物は歯並びに影響を及ぼし、歯並びや噛み合わせの悪さは、食べ物の好みへも影響します。
硬い食べ物を食べることは、歯並びや噛み合わせに影響するほか、食の豊かさにも影響することでしょう。
体の成長と共に顎の骨も成長していくことで、永久歯が生え変わる際に十分なスペースが確保され、歯並びも整っていきます。
言い換えると、顎の骨が十分に発達しないと、永久歯が斜めに生えたり、前にせり出して生えるようになってしまうのです。
食べ物が柔らかくなることで、歯を伝って顎の骨への刺激が少なくなり、顎の骨が十分に大きくなることができなくなります。
すると、永久歯に生え変わるときにそのためのスペースが不十分で、歯並びに影響を及ぼすのです。
歯並びや噛み合わせが悪くなることで、前歯で噛み切ることが難しくなると、食べ物の質が変化しますが、食べ物の質が変化することで歯並びや噛み合わせはさらに悪化します。
硬いものを食べ、歯並びと噛み合わせに刺激を与えるようにしましょう。