矯正の前に、むし歯治療が必要なワケ

「痛い」「しみる」はむし歯のサイン

矯正の前に、むし歯治療が必要なワケ

歯が痛い、しみる……。25~64歳では15~20%がそう自覚しています1)。こんな症状があったとき、最も疑われるのがむし歯です。25~84歳でむし歯(治療したむし歯も含む)がある人は80%以上にのぼります。特に35~54歳では100%に近く、そのうちの約30%は治療が終わっていないむし歯をもっています1)

歯並びやかみ合わせが悪いと、ブラッシング時のみがき残しが多くなるため、むし歯ができやすくなります。矯正治療を考えている方で未治療のむし歯があるなら、まずその治療をしましょう。セラミック矯正という治療法は治療期間の短さがメリットの1つですが、この治療に入ってからむし歯も治すとなると治療が長引き、せっかくのメリットを生かせません。

進行するにつれて症状が変わる

むし歯は、口の中にすむむし歯菌がつくりだす酸によって歯の成分が溶け出し、やがて孔(あな)があいてしまう病気です。

歯は、いちばん外側が硬いエナメル質、その内側が象牙質という構造で、象牙質の中に“歯の神経”と呼ばれる歯髄(しずい)が入っています。歯髄は血管やリンパ管も含む組織で、痛みを伝えるだけでなく、歯に栄養を運ぶなどの役割ももっています。

むし歯は進行するにつれて自覚症状が変化し、治療法も違ってきます。進行の過程を知って、早めに対処しましょう。進行度は、一般に5段階に分けられます(1)。

図1 むし歯の進行

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歯の表面に白く濁った点がありますが、表面に孔はあいていない状態です。痛い、しみるなどの自覚症状はありません。「初期むし歯」はこの段階のことで、削らなくても修復できる可能性があります。

C1

歯の表面に白い濁りや黒い点が見えます。むし歯はエナメル質にとどまっており、自覚症状はまだありません。病変部を削り、樹脂製の歯科材料である「コンポジットレジン(CR)」を詰めて修復します。

C2

歯の表面に孔があき、黒くみえます。むし歯は象牙質に達していますが、歯髄には及んでいません。冷たいものや甘いものがしみますが、それらが口の中からなくなると症状も消えます。痛みはかんだときに感じます。治療はC1と同じでよい場合が多いのですが、病変部が大きければ型を取って歯科技工士がつくる「インレー」という詰め物を使うこともあります。

C3

むし歯は歯髄に及んでいます。はじめは歯髄が生きていますが、進行すると死んでしまい、その違いによって症状や治療法が異なります。

C4

歯冠(歯の見えている部分)の大部分が崩壊します。歯髄は死んでおり、根尖病変をもっていることが多く、その場合は痛みや歯ぐきの腫れがみられます。C4の状態では、抜歯が必要です。

痛みの消失は神経が死んだ証拠

 

【歯髄が生きている場合】

熱いものがしみ、しばらくうずきが続きます。何もないのにズキズキ痛むこともあります。 通常は“神経を抜く治療”である「抜髄(ばつずい)」が行われます。CRやインレーで修復しますが、削った部分が大きい場合は、「クラウン」と呼ばれるかぶせ物を用います。

【歯髄が死んでいる場合】

通常、しみる、痛いなどの症状はなくなりますが、その後にかむと痛くなったり、歯ぐきが腫れたりすることがあります。これは、感染が歯の根の先から進み、歯を支える歯周組織に広がっているためです。この状態を「根尖(こんせん)性歯周炎」といい、根の先にウミがたまると激痛に襲われることもあります。歯髄が死んでいれば、“根の治療”と呼ばれる「感染根管治療」が行われます。抜髄より大きく削るので、多くの場合、修復にはかぶせ物が必要になります。

このように、むし歯は進行するほど大がかりな治療が必要になります。安心して矯正治療に臨むために、自覚症状があったらすぐに受診してむし歯を治しましょう。

1)厚生労働省, 平成28年歯科疾患実態調査

《参考資料》

下山和弘, 秋本和宏(編), カラー版 やさしい歯と口の事典. 医歯薬出版 2018

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